突撃!隣の東南アジア 【Alliance Software編】
はじめに
こんにちは、knakayamaです。
今回の突撃!隣の東南アジアはセブ島に本社を持ちオフショア開発やPoSシステムを開発されているAlliance Softwareさんのオフィスにお邪魔して来ました。オフショア開発に関するお話やフィリピンにおけるビジネスの魅力などについてお聞きしてきたので、本エントリにまとめたいと思います!
以下の画像は今回お邪魔したAlliance Softwareさんの本社が入っているビルです。セブ島でIT関連の企業が集積しているCebu I.T Park内にあります。
Alliance Softwareの紹介
どんなことをやっている?
Alliance Softwareは2000年創業の独立系開発ベンダーです。現時点の従業員は約400名で、セブに本社と開発拠点がありマニラにも支社が存在します。マニラ支社は主にセールスを担当されているとのこと。また、日本企業向けにオフショア開発を行っているということもあり、アライアンスソフトウェアジャパンという子会社が東京にオフィスを持っています。東京オフィスの歴史は古く、2006年から設立されているそうです。主にブリッジエンジニアが在籍し、日本企業との折衝やフィリピン側エンジニアとのコミュニケーションを行っているとのことでした。
主なビジネスドメインは日本企業向けのオフショア開発、フィリピン国内向けのパッケージソフト開発(PoSシステム)、保守サービス(コール対応、フィールドサービス)、そしてアプリケーションの受託開発とおっしゃっていました。
インタビューに答えていただいた方々
右からSHERWIN D.YUさん、ANNALIE PONCE-MIÑOZAさんです。インタビューはAlliance Softwareさんの会議室で行いました。お二方とも役職者の方々なのでインタビュー中は緊張しっぱなしでした><。
- SHERWIN D.YUさん
- Chief Operating Officer
- ANNALIE PONCE-MIÑOZAさん
- Assistant Vice-President
これまでどんなビジネスを日本企業と行ってきた?
- オフィスの様子(社内は広々としていました!)
主な技術ドメインは業務アプリケーションやモバイルアプリの開発。JavaやMicrosoft製品を得意とし、アプリケーション開発を実施されています。リテールや金融などを初めとする、厳密な業務ロジックを必要とするアプリケーションの開発を行っているとのことでした。日本企業側との要件定義からはじまり、アプリケーション開発、そしてソフトウェアテスト(ユニットテスト、インテグレーションテスト、システムテストなど)も行っているそうです。 レベニューの約7割を日本企業との取り引きから得ている とおっしゃっていました(残りがフィリピンや他の国でのビジネス)。
フィリピンの日本向けオフショア開発の黎明期から 約20年に渡り日本の大手企業と取り引きを続けてきた そうです。もともとSHERWINさんを初めとすると役員メンバーが日本で働いていたことがある点と、日本貿易振興機構(JETRO)からの紹介が日本企業と関わるきっかけとなった理由とおっしゃっていました。
日本語を母国語とする多くの日本人ブリッジエンジニアを社内に持ち、日本企業とフィリピン側開発チーム間のコミュニケーションを円滑に進められる点に特徴があるとおっしゃっていました。こういった豊富なヒューマンリソースを持つことで、一般的なオフショア開発ベンダが不得意とする 企画・提案を行うことができる 点に強みがあるそうです。
さらに、上述した日本法人を持つことで煩雑なプロジェクト管理やオフショアメンバーの管理は日本側で行うこともあるとのこと。この場合、日本企業としては日本のベンダにアウトソースする感覚、かつオフショア開発レベルのコストでサービスを提供できるとおっしゃっていました。
オフショア事業を行っている会社は他にもいる中でAlliance Softwareの強みは何?
- 休憩スペースの様子
続いて、数あるオフショア開発企業の中で、Alliance Softwareさんの強みについてお聞きしてみました。長年のオフショア開発のご経験から、他の企業と比較して以下の強みがあるとおっしゃっていました。
- 日本品質の実現
長年の日本企業向けオフショア開発の経験から、日本企業が期待するソフトウェア品質を実現するためのノウハウを培ってきました。弊社の日本向けビジネスユニットに所属するエンジニアは、特別なトレーニングを受けて、品質に対する意識を強く持ち、納期と品質の両立を実現することでお客様の信頼を得ています。
- 業務アプリケーションに特化
弊社では、設立以来一貫して業務アプリケーションの開発に従事しています。日本向けではリテール・金融をはじめ、様々な業種業界の業務アプリケーション開発を手掛け、フィリピンでは各種ビジネスアプリケーションパッケージの開発・販売を行っております。またフィリピン大手企業向けにAMS(Application Management Services)を提供するなど、幅広いビジネスロジックの知見を蓄積しています。
- 低い離職率
フィリピンのソフトウェア業界の離職率は、平均で20%前後と言われています。弊社では様々な人事施策を講じ、平均10%と他社に比べて圧倒的に低い離職率を実現しています。このため、ラボ型開発などで、長期的なノウハウ向上を期待される場合でも、最低限の人の入れ替えのみで対応できることが弊社の強みです。
- 大手企業との直接取引
弊社は、大手SIerの下請け業務が多い他のオフショアベンダーと異なり、多くの日本の大手企業と直接取引を行っています。よって、要件定義や基本設計などの上流工程や、システム・サービスの提案活動等も積極的に行っています。お客様のご要望を直接伺い、それらを実現して信頼を得ることができるトータルなビジネス力は弊社の強みです。
- 優秀な学生の採用
昨今は、フィリピンでも人材獲得競争が激しさを増しておりますが、弊社は学生の人気就職先ランキングでも常に5位以内に入る人気企業として認知されており、フィリピン中南部の優秀な理工系大学の成績上位者を優先的に採用できるブランド力を培ってきました。
オフショア in フィリピン
- バックオフィス系業務が行われているフロア(後ろが社長室です)
ベトナムなどオフショア開発先の国の選択肢は複数ある中でフィリピンの強みは何?
日本企業とのオフショア開発はフィリピン以外の国でも行われています。そういった状況の中で、フィリピンという国自体の魅力・メリットについてお聞きしてみました。
- 高い英語力
フィリピンの国語はタガログ語ですが、公用語として英語が広く使われており、国民の93%が英語を話せるという東南アジア一番の英語国です。フィリピンの英語人口は世界3位にランキングされ、BPOなどでフィリピンの経済成長を支える原動力になっています。エンジニア全員と英語でコミュニケーションができることは、フィリピンオフショア最大の強みとなっています。また、ITに関わる情報は基本全て英語でやり取りされています。英語を自由に扱えるということは、最先端の情報にもアクセスしやすくするということを意味し、技術力の高いエンジニアを排出しやすい土壌となっています。
- 長期的な人口ボーナス
Wikipediaによると人口ボーナスとは「総人口に占める働く人の割合が上昇し、経済成長が促進されること」です。日本の場合は「1960年代の高度成長期に人口ボーナス期を迎え、豊富な労働力が経済発展に寄与した」そうです。フィリピンの人口は現在約1億人で、この人口ボーナスが2062年まで継続する見込みというレポートも存在するほど、若い労働力を豊富に抱えています。高い英語力と合わせ、豊富な人口を持っている点がフィリピンの魅力の1つと言えます。
- コラボレーションが得意
素直で明るい国民性のフィリピン人は、チームで働くのが得意です。日本人とのビジネスにおける親和性も高く、数々の日本企業がフィリピンに進出し成功しています。ソフトウェア開発においては必須ともいえるこのチームワークスキルで、フィリピンは高く評価されています。
- 欧米流ビジネススタイル
スペイン及びアメリカの影響を強く受けてきたフィリピンの経済界は、ビジネススタイルやビジネスマナーも欧米流です。日本企業がビジネスを行う上でも、契約・納期の順守や、ビジネス上の礼儀など、フィリピン企業とはビジネスがやりやすい環境が整っています。
オフショア開発を導くために発注側が重視すべきことは?
オフショア開発を依頼する側が注意すべきことについてお聞きしてみました。主に2点あると言います。
1つ目。依頼する側もオフショア開発の準備をすべきとおっしゃっていました。例えば、ソフトウェアの仕様をクリアにする、無理のないスケジュールを考えておく、開発側に自分たちの期待感を伝えるなどです。これはオフショア開発に限らず、ソフトウェアをアウトソースする際に発注者側が行うべき基本的なことと同じですね。
2つ目。こちらはオフショア開発特有だと思いますが、 異国でソフトウェアを開発しているエンジニアとコミュニケーションを密に取ることが重要 だとおっしゃっていました。フェイス・トゥ・フェイスやビデオ会議でもよいので、自分たちの期待感をエンジニアに伝えたり、逆にエンジニアとプロジェクトの状況について意見を交わすことが重要とのことです。つまり、ブリッジエンジニアがいるからといってその人に任せっきり、月1回ぐらいしか顔を見ないといった態度はよい結果を生み出さないとおっしゃっていました。
プロジェクトを円滑に進行する上では価値のあるプロダクトを一緒に開発しているという意識をチーム内で共有していることが重要だと思います。単なる発注者 - 受注者という関係では長期的な観点から見てよいプロダクトは生まれません。2つ目でおっしゃっていた「密なコミュニケーション」。この視点はとても重要な考え方だと感じました。
オフショア事業を進めていく上で苦労したことは?
- 勉強会などに利用されている部屋(正面にはプロジェクターなどが設置されていました)
長年のオフショア開発の中で苦労された点についてもお聞きしてみました。それは要件がなかなか固まらない場合だとおっしゃっていました。この点は日本の会社でも同じことですね。
この問題に対するアプローチとして2つの点が重要だと続けます。まず1つ目はズバリ要件をクリアにすること。2つ目は細かい粒度でリリースさせる方法です。1つ目はそのままですね。2つ目。一般的にウォーターフォール型の開発手法は要件の変更に弱いとされています。1つの工程が終わってから次へ進むというフローのため、前の工程で変更があると後続の作業全てで影響が出てしまうからです。これに対してアジャイルの手法では、細かい単位(スプリント)でゴールを設定しそれを順次リリースさせる、つまり斬新的にプロダクトを開発するというアプローチを取ります。結果として、仕様に変更が入ったしてもその影響範囲を局所化できる強みがあります。こういったアジャイルのアプローチが有効だとおっしゃっていました。
この点に関連してAlliance Softwareさんにおけるアジャイルの利用についてもお聞きしてみました。
一般的なプロジェクトではウォーターフォール型でプロジェクト管理をしているそうですが、アジャイル型の開発経験も豊富とのことです。要件がクリアでない場合などのプロジェクトではウォーターフォール型よりアジャイルでのプロジェクト進行の方が向くとおっしゃっていました。個人的にはアジャイルの手法はオフショア開発を進める上ですごく相性がよさそうだなとお話を聞いていて感じました。仮に、お客様側にアジャイルの知識がない場合には、一緒にユーザーストーリーマッピングを作ったり、タスクをバックログ化したりといったようにお客様と一緒にアジャイルの仕組みを取り入れていくこともあるとおっしゃっていました。
まとめ
今回貴重なお時間をいただきとても興味深いお話を聞くことができました。
特に興味深かったのは日本企業とスムースにコミュニケーションを取るため、多くの日本人ブリッジエンジニアを持っている点、またフィリピン人社員に対しても社内で日本語や日本流の考え方(ホウレンソウや朝礼など)を教える取り組みをしている点です。
オフショア開発における難しさの1つは言語の壁とそれに起因する文化≒思想の違いだと思います。異なる言語を母国語とする人同士がコミュニケーションを取ろうとすると認識の齟齬が発生しがちです。いわゆるソフトウェア開発における暗黙知と呼ばれるものです。同じ日本企業同士であれば「阿吽」でものごとが進んでいたことがオフショア開発ではうまくいかない。それを極力少なくするために、あるいはお客様となる日本企業にそれを感じさせないために、日本語教育を初めとする取り組みをされている点にAlliance Softwareさんが長年日本企業とともに歩んできた強みの源泉があると感じました。
インタビュー終了後、社内を見学させていただきました。オフィスの中には以下のような日本語教育のスペースも用意されています。
最後にみなさんと一緒に集合写真を取らせていただきました!一番右端が私です。実は今回のインタビュー、以前ブログでご紹介させていただいたgecogecoさんの紹介で実現したものです。そういった事情や私の英語力が低いということもあり、インタビューにはgecogecoの前田さん(左端)も同席していただきました。ありがとうございます!